R’s diary

関西の女子大生。

初めて。

お題「わたしの記念日」


高校に入り、周りはぞくぞくと恋人を作って華の高校生活を謳歌していた。一緒に下校したり、寄り道してマックに寄ったり、梅田へ遊びに行ってプリクラを撮る。定番だけど充実している、所謂リア充というものだ。


周りが "リア充"をしている中、私は部活に明け暮れていた。私の所属していたクラブは強豪と呼ばれもちろん毎日練習があるし、終わる頃には帰るので精一杯。当然恋人がいても、一緒に帰る元気もあるのかな、といった具合である。




そんな私に初めて彼氏ができた。
一度告白して振られた相手だった。野球部でキャッチャーのポジションだった彼は、クラスは違えど仲良くしてくれる少しクールな男の子だった。

放課後呼び出された。
中庭の階段で、付き合ってほしい。と言われたことを今でも鮮明に覚えている。頭が真っ白になって何も言えずにいたら、いい?と聞かれた。こくん、と頷いた私に嬉しそうにありがとう、と言ってくれた彼の顔は恥ずかしさで見られなかった。





初めての彼氏。友達から、彼氏になった。


どうやって連絡を取ればいいのかな。
好きは毎日伝えた方がいいのかな。


距離感がわからなかった。
でも、好きだった。大好きだった。自分なりに模索して、友達に相談して、必死に愛を伝えていた。


嫌われないように。
離れないように。


今になって思う。



これが良くなかったんだなって。




最初のうちは、俺も好き。と伝えてくれる彼に安心感を覚えて、その言葉が欲しいが故に愛を囁き過ぎていた。SNSのプロフィール欄に付き合った日付を入れてくれた彼に舞い上がった。


それだけで愛されている気分になった。
私も、彼も、若かった。




もちろん甘い関係は長くは続かない。
それは2ヶ月が経とうとしたある日、突然訪れる。


『俺、もう好きかどうかわからん』



最初は冗談かなと思った。唐突すぎた。
普段から連絡もクールだったから絵文字がないのに気がつかなかった。スッと血の気が引いたのを覚えている。



冬の22時に外で自転車に跨りながら、必死に別れようという言葉を言われないように、突きつけられないように、私は好きだと無意味な愛を囁いた。




そこから家へ帰るまでは頭が真っ白だった。
坂がたくさんあったはずなのにしんどかった思い出がない。必死に自転車を走らせたのだろう。目から溢れる涙が落ちないように、上を向いて走らせた。





しばらく引きずった。学校で顔を合わせるのも嫌だったし、友達からその話題をされるのも嫌だった。





初めての彼と付き合った記念日から、今年でもう4年が経つ。


これだけの月日を経て、漸くあの時の私を客観的に見られるようになった。
クールな彼の性格をきちんとわかってあげられていなかったな。依存しすぎていたな。と。


大学生になり、考え方も高校生の頃と随分変わった。


ふと考えることがある。
今の私なら当時の彼と上手くやれたのかな、と。
今でもごく稀に連絡がくることがある。何気ない話題だ。一瞬で連絡は切れるのだが、私の中でその一瞬に、ほんの少し学生の頃の懐かしい気持ちが詰まっているように感じる。


思い返してみれば、洋楽を好きになったのも付き合う前に彼からおすすめのCDを借りたからだし、野球部の友達がたくさん増えたのも彼とお付き合いできたからだ。



長くは続かなかった彼だけど、たくさん感謝している存在である。
いつか2人でゆっくりお茶でもしたい。




毎年、記念日が来るたびに告白してくれたことをふと思い出す。







12月1日




私の忘れられない記念日。








R

12.14